反対派を引っ張る方法

"2:6:2の法則" 反対する人はかならずいる

なにかに取り組むとき、人員の2割は推進派となり、6割はそれに引っ張られる中間派となり、残り2割が反対派になる。これが262の法則です。

弊社において、3S活動の推進派は社長と副社長(当時の常務)です。それ以外、6割の社員が「社長と常務がいうから、やろう」とついてきてくれる中間派、2割が反対派です。

組織には必ず反対する人がいる。

それはもう、仕方ないことと受け入れることにしました。怒ったり、落胆したりしても始まりません。そう思ってみると、肩の力が抜けました。受け入れてみると、相手に対する表情も変わります。すると、相手の表情も変わりました。

人間とは、鏡のような存在です。こちらが敵意を持って接すれば、敵意を持たれます。逆に好意を持って接すれば、好意を返してくれるのです。

3S活動の取り組みに反対している彼らだって、枚岡合金工具の将来を心配する思いに変わりはないのです。単に方法論が異なっているだけでした。

ならば、彼らのそういう思いに感謝をしていればいいのではないかと思い直しました。反対されているということだけに意識を向けても意味はありません。

多くの経営者は、反対派の2割にエネルギーを注いでしまいます。そうなると、ついてきてくれていた中間派への影響力が弱まり、力が拮抗して引き合いになってしまうのです。

しかし、反対派を気にせず、推進派と中間派の8割に力を注ぐと、全体がそちらに引っ張られていきます。経営者としては、1人でも多くの味方を作ることに力を注ぐべきなのです。そうすることで、反対派をも巻き込んでいくことができます。

たとえば、研修会場でみんなが椅子を並べて準備をしていると、1人で座っていづらい雰囲気になります。しかたなく自分も立ち上がって、椅子を押したり引いたりしながら体裁だけやったりすることがあります。それでいいのです。そんな風に体裁だけでも3S活動をやっているようにしてもらえれば、よしとすることにしたのです。

社長が"本気"を行動で示せば社員は変わる

弊社で「3S活動に取り組む」と表明したとき、ひとまず、反対した社員はいませんでした。しかしそれでも社員の心のなかには、ぬぐいがたく「掃除をやることにどんな意味があるのだろうか」「本当に掃除で経営革新ができるのだろうか」という思いがありました。

最初から喜んでやっている社員など、誰一人いなかったのです。そんな彼らを相手に3S活動を進めていくには、どうしたらいいのか。自発的に取り組まざるをえない雰囲気にしていくには、一体何をすべきなのか。

お金はない、強権的に取り組ませたくも無いとすれば、社長自ら率先垂範することです。

殆どの社員は「掃除は外部の仕事」という思い込みを持っています。そこに会社のトップが率先して掃除する姿を見たらどうなるか。上杉鷹山の言葉に「してみせて、いってきかせて、させてみる」とありますが、その通りのことが起こりました。

毎日の掃除を一生懸命やるのはもちろん、必要とあれば休日も返上で3S活動に取り組みました。そうこうしているうちに、次第に社員の態度も少しずつ変わってきました。1人、また1人と掃除に精を出すようになったのです。

「社員がいうことを聞かない」と嘆く経営者は決して少なくありません。弊社のように、昔ながらの職人気質が多い職場ではなおさらでしょう。しかしそれでも、社長が本気で取り組めば、社長の背中を見て社員は少しずつ変わっていくのです。