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3S取り組みの経緯
バルブ崩壊後も枚岡合金工具では売上が半減しながらも6年間黒字経営が続いていました。
儲かっているがゆえに問題意識を持たなくなり、朝から晩まで日々の生産に追われるだけ。社員の高齢化が進み職場改善どころか掃除もろくにしない"ゆで蛙状態"の体質の会社になっていました。
「このままでは潰れるのは時間の問題だ」
活路を求めて様々な勉強会に出かけました。
投影機とPC環境
書類の散乱するオフィス
"ピカピカ工場"との出会い
勉強会の一環として、京都のある工場を訪れたことが大きな転機となりました。
テーマパークのような綺麗な工場で、床にゴミ一つ落ちていない。
定位置、定量、定方向、表示、標識が徹底されており、生産工程、計画も一目でだれでも直ぐに分かる仕組みになっていました。空調が完備し、壁面にはイルカの親子が喜んで飛び跳ねている絵が描かれていました。
より印象的だったのは、社員さんの明るい笑顔の挨拶と生き生きとされている姿に感動しました。社員さん手作りの工夫された改善の軌跡、奇跡…トイレもピカピカに輝いていました。
ビデオを持つ手が震えていました。
「これこそ目指す理想の工場だ!」
「ここまで改革を指導できるコンサルタント会社なら間違いがない」と、コンサルの門を叩くことを決意していました。
異業種グループで3S活動の研究会『大阪リエンジニアリング研究会』を設立
1社ではコンサルタント料を負担しきれないため、株式会社山田製作所さんを中心に研究会のメンバー67社に参加を呼びかけ、1999年5月に3S活動に賛同した6社で『大阪リエンジニアリング研究会』を立ち上げました。
月に1回、6社の工場を巡回しての3S活動、整理・整頓・清掃を学び、大山繁喜先生の厳しいご指導のもと日々実践してゆきました。 現在、同研究会は2007年8月に第100回記念大会を迎えるまでになっています。
社長の本気宣言
月一度、社内で行っている業績報告会で、3S活動に取り組むことを伝えました。
会議に臨むにあたって、なぜ3S活動に取り組まなくてはならないのかを書面にまとめました。それは社長自身が本気で3Sに取り組むという宣言書でもあります。
内容を要約すると次のとおりです。
「今年度に入り、得意先の値引き要求や受注減もあり、売上は10%以上減少しています。」
そんな中でもわが社は現在、生産が受注に追いついていない状態です。段取り替え、特急品の依頼も少なくありません。今後、得意先の設備投資の状況を予測すると、現在の生産能力では対応出来ないでしょう。
だからといって、器を大きくすればいいというものではありません。効率的な生産の仕組みを会得しなくては、『拡大→生産力ダウン→倒産』が待ち受けています。
今必要なのは、効率的な仕組みづくりです。
そのための必須条件となるのが、3S活動の徹底です。
この3S活動による企業改革の目的は3つあります。
- 将来にわたる確実な雇用の安定と、社員・家族の幸せです。
- 良質なものづくりを通じてお客様・地域社会に喜ばれ、必要とされる存在になること。会社はもとより社員個々人もです。
- わが社が地域社会に、また広く社会に貢献する企業となることです。
それが出来る企業のみが盛大となり繁栄していくことが許されるのです。
そしてこれらの活動を通じてお互いを高め合い、子々孫々に誇れる人生を想像します。いわば人生修行の場として、日々真剣勝負で、企業改革・自己改革に取り組みます。
しかし、コンサルティング料は高額です。ならば、同じ悩みを持つ企業が集まって、共同でコンサルティングを受けようということになりました。
わが社を含め、6社で『大阪リエンジニアリング研究会』を発足し、来る5月29日に大阪府立中央図書館において旗揚げを行います。
第2回目は、山田製作所の現場でやることに決まりました。それ以降は、毎月第2月曜日に各社持ち回りで行います。
枚岡合金工具での開催は、10月4日を予定しています。コンサルタントの先生と、大阪リエンジニアリング研究会より各1,2名がわが社の工場に来て、一緒に学びます。
「狭い場所にそんなに来て、どないすんねん」という声が聞こえてきそうですが、よろしくお願いいたします。
ひと通り書面を読み、社員の顔を見ました。
意外なことに、反対をする人はいませんでした。それどころか、「やってみよう」と言ってくれるじゃないですか。社員の賛同に大いに励まされました。
今思えば、それだけ社員も会社の先行きが不安で、ワラにもすがる思いだったということです。会社そのものが溺れそうなときに、1本の救いの縄が投げられた。そんなときに「この縄は丈夫かわからへんから、イヤや」という人はいません。
会社のピンチが、社員を一丸としたのです。